描きはじめの期待感と途中の高揚感に反し、完成後に迎える言い知れぬ喪失感。 描き終わりはいつもこう。 サインを入れた後で無性に寂しさを覚えるのは、短くとも幸福に満ちた時間を共にできた絵との別れがあるからか。 心の中で作品にありがとうと伝え、別れ惜しむ間もなく次の白紙を前にする。 

こんなルーティンをもう何十年もやってきた。 注いだ愛情の分だけ見返りがあったなら、今頃贅沢な生活も送れただろう。 しかし現実は思うようにはいかない。 でもそれでもいいと思えるのは、絵に対し盲目に恋ができるから。 恋の数だけ作品が増えていくのだからこんな贅沢はない。  

作品に恋し、愛に変え振り撒けることの素晴らしさに感謝。 

全てに感謝。 ありがとう。

Kit.